第3話【 金に這い寄る者】
3年前 都内某所
新井拓馬は友人と飲みに赤波根に行っていた。
「最近仕事どう?」
「まぁ…ボチボチって感じかな。」
「そうか…俺も!」
「お前は歯医者だろ?ボチボチって言っても俺からしたら凄いよ」
「ピンキリだけどな」
友人は学生の時から頭がよかった。父親は外科医、母親は薬剤師という医者の息子だった。しかし、兄弟の中では出来があまり良くなかったそう。だから歯医者になったらしい。
「で、お前彼女できた?」
「できてないよ」
「そっか…彼女はいいぞー 可愛くってさー」
友人は昔からモテた。バレンタインの日なんて両手に紙袋持って部室へ来て
「お前らこれ食べていいよ!俺ひとりじゃ無理w」
なんてこと言ってたっけ。
「そういえばお前何で学生時代に彼女いなかったん?告白だってよくされてたのに」
「あぁ、それはね」
友人は少し暗そうな顔をして
「俺のどこが好きなのって聞くと全員口を揃えて「お金持ちだから」って言ってきたんだよ。」
「そうだったのか… 今の彼女はどうなんだ?」
「今の彼女は今までの女とは違う。」
「そりゃ良かったな。お幸せに~」
俺はどこがどんな風に違うのかが何となく分かる気がした。
それから2時間後、俺と友人は店を出て別れた。